知事許可と大臣許可の違い｜営業所の場所で決まるルール

2025年12月6日 2025年12月6日行政書士古川俊輔

行政書士古川俊輔

建設業許可を取得する際、最初に判断すべきことの一つが、誰（どの行政庁）に申請するかということです。これは、あなたの会社が建設業の「営業所」をどこに設けているかによって決まります。

1. 知事許可と大臣許可の基本的な違い

建設業許可の申請先は、以下の2種類に分かれます。

【ポイント】 知事許可であっても、その効力は全国に及びます。たとえば、埼玉県知事許可を取得した業者が、東京都や大阪府で工事を請け負うことに制限はありません。
違いはあくまで「営業所がどこにあるか」だけであり、「どこで工事を行うか」は関係ありません。

「営業所」の定義を正しく理解することが、知事許可と大臣許可を判断する上で重要です。

建設業法における営業所とは、単なる作業場所や資材置き場を指すのではありません。以下のすべての要件を満たす場所を指します。

① 契約機能： 請負契約の締結に関する事務を行う場所。
② 見積もり機能： 見積もり、入札、契約締結など、実体的な営業活動を行う場所。
③ 組織機能： 本店または支店など、継続的に営業活動を行い、専任技術者や経営業務の管理責任者（経管）など、許可要件となる人材が常勤している場所。

以下の場所は、原則として許可の対象となる「営業所」とは見なされません。

状況	許可の種類	理由
本店が東京都、支店（専任技術者常駐）が神奈川県。	国土交通大臣許可	営業所が東京都と神奈川県の2つ以上の都道府県にまたがっているため。
本店が大阪府、営業所（契約機能あり）が福岡県。	国土交通大臣許可	営業所が大阪府と福岡県の2箇所に存在するため。

知事許可と大臣許可は、申請手続きの面で以下のような違いがあります。

項目	知事許可	大臣許可
主な申請先	各都道府県の建設業担当課	本店所在地を管轄する地方整備局
手数料	9万円	15万円
審査期間	30日～45日程度	90日～120日程度（知事許可より時間がかかる傾向）
手続きの複雑さ	比較的シンプル	営業所の確認や地方整備局の審査が入るため、複雑になる傾向がある

当面の事業計画に複数の都道府県での営業所の設置予定がないのであれば、まずは知事許可を取得するのが最も手続きがシンプルで、許可取得までの期間も短く済みます。
将来的に隣接県に支店を設けることが確定している場合は、最初から大臣許可を申請することで、後から「知事許可から大臣許可への切り替え」という複雑な手続きを避けることができます。

知事許可と大臣許可の判断は、工事を請け負う場所ではなく、実態として営業機能を持つ場所がどの都道府県にあるか、ただそれだけで決まります。

1つの都道府県のみに営業所がある	知事許可
2つ以上の都道府県に営業所がある	大臣許可

あなたの事業計画に合わせて、最適な許可形態を選択することが重要です。
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