鋼構造物工事業と鉄筋工事の違いとは?
建設工事の現場において、建物の骨組みや構造を担う工事には「鋼構造物工事業」と「鉄筋工事業」の二つがあり、それぞれ全く異なる許可業種として分類されています。
この二つの違いを理解することは、適切な許可を取得し、無許可営業のリスクを避けるために非常に重要です。
1. 違いの核心:何をどう使うか?
最も簡単に言えば、鋼構造物工事業は「H形鋼や鋼板など、加工された鋼材を組み立てる工事」であり、鉄筋工事業は「棒状の鉄筋を現場で組んでいく工事」です。
| 許可業種 | 使用する主要材料 | 主な目的 | 構造の種類 |
| 鋼構造物工事業 | H形鋼、鋼板、トラス材など加工された鋼材 | 鉄骨構造物(S造)の骨組みを建設・組み立てる | S造(鉄骨造) |
| 鉄筋工事業 | 異形棒鋼など、棒状の鉄筋 | 鉄筋コンクリート構造物(RC造)の強度を確保する | RC造(鉄筋コンクリート造) |
2. 鋼構造物工事業の工事範囲と役割
鋼構造物工事業は、鉄骨造(S造)の建物の骨組みを作る工事であり、工場で製作された部材を現場で組み立てる作業が中心です。
2-1. 主な工事内容
- 鉄骨組立工事: ビル、工場、倉庫、橋梁などの鉄骨の柱や梁を組み立てる工事。
- 鉄塔工事: 送電線や無線の中継鉄塔などの設置工事。
- 石油タンク、貯蔵用タンクなどの設置工事: 鋼材で構成された大型タンクの設置。
- その他: 門型クレーン、鋼製水門、高架水槽の設置など。
2-2. 注意点:製作と設置の両方
- 鋼構造物工事業には、工場での鋼材の加工・製作(溶接、切断など)と、現場での組み立て・設置の両方が含まれます。
- 加工された鉄骨を現場で組み立てることのみを請け負う場合は、「とび・土工・コンクリート工事」に該当します。
3. 鉄筋工事業の工事範囲と役割
鉄筋工事業は、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物や構造物の骨組みを作る工事です。コンクリートを流し込む前に、鉄筋を設計図どおりに配置し、結束していく作業を行います。
3-1. 主な工事内容
- 鉄筋の加工・組立工事: 棒状の鉄筋を現場で切断、折り曲げ、配置し、コンクリートが固まった後に強度を保つための骨組みを作る工事。
- 継手工事: 鉄筋同士を繋ぎ合わせる工事。
3-2. 重要な注意点:型枠・コンクリートは別業種
- 鉄筋工事業の許可は、あくまで「鉄筋の組立」までです。
- 鉄筋の外側に、コンクリートを流し込むための型枠を設置する工事は「大工工事業」として分類されます。
- 型枠を組み、鉄筋を配置した後に、コンクリートを流し込み、固める工事は「とび・土工・コンクリート工事業」に分類されます。
4. 専任技術者の要件の違い(資格の視点)
この二つの許可は完全に別業種であるため、専任技術者(専技)の資格も異なります。
| 許可業種 | 必要な資格の例 |
| 鋼構造物工事業 | 1級・2級建築施工管理技士(躯体)、1級・2級土木施工管理技士 |
| 鉄筋工事業 | 1級・2級建築施工管理技士、技能検定(鉄筋施工) |
- ポイント: どちらの工事も行う業者は、両方の資格(またはそれぞれの実務経験)を持つ技術者を専任技術者として配置し、両方の業種で許可を取得する必要があります。
5. まとめ:発注者が求める許可はどちらか確認しよう
あなたが請け負う工事が「鉄骨の組立」なのか、それとも「鉄筋の組立」なのかによって、必要な許可は異なります。
| 判断基準 | 鋼構造物工事業 | 鉄筋工事業 |
| 主要な材料 | H形鋼、鋼板 | 棒状の鉄筋 |
| 工事の目的 | 鉄骨(S造)の建物の骨組み | 鉄筋コンクリート(RC造)の骨組み |
| 請け負う工事 | ビルや倉庫の鉄骨組立 | マンションや橋梁の鉄筋組立 |
当事務所では、お客様が請け負う工事を詳細にヒアリングし、鋼構造物工事業と鉄筋工事業のどちら、または両方が必要かを正確に判断し、許可取得のサポートを行います。
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